紅魔館。
とある湖の中央にその館は建っている。
しかし、この館は他の建物とは何かが違う。
異常なほどの存在感を放っているのだ。
何故か。
館が血で染められたような色をしているからだろうか。
いや、違う。
紅すぎるその館は意外にもその場に馴染んでいる。
さも紅いのが当然であるかのように。
ならば異常なまでの存在感は何に起因しているのか。
それは中に住む者によって引き起こされていると言わざるを得ない。
レミリア・スカーレット。
館の主である彼女の名は畏怖の念とともに広く知れ渡っている。
であるが故に、館そのものにも恐怖を感じる者が多いのだ。
これが存在感の根源である。
だがしかし…。
ほとんどの人 ─いや、人外の者も─ は知らないのだ。
この館には、主を遥かに凌駕する恐怖の存在が眠っていることを。
レミリアの妹であるあなたの存在を。
知られていないのも無理はない。
何しろあなたは495年間、いまだかつて館の外に出たことがないのだから。
外の世界に対して興味を持ったことなどなかったのだから。
しかし、最近になって外に出てみたいと思うようになった。
きっかけは外からやって来た1人の人間。
直接会ったのはたったの1回だけだ。
けれど、生まれて初めて見る生きた人間の印象は強烈だった。
その人間が人間離れした能力を持っていたからというのは確かにある。
だが、それだけではないと本能が告げている。
そう、何か新しい風が吹き込まれたような、そんな感じがした。
外の世界には何があるのか。
どうしてそんな風が起こせるのか。
確認してみたいと思った。
だから…。
だから、今日は外に出てみようと思う。
そこに何かがあるような気がするから…。
プロローグ終了